食料品の賞味期限の偽装問題や、輸入食品の安全性が大きなニュースとして連日取り上げられています。また、遺伝子組換え食品や食品添加物の危険性を訴えるニュースや書籍もたくさんあります。メディアは危険性のあるものに人々の目を向けることが仕事ですから、こうした問題はセンセーショナルに取り上げられがちです。しかしながら、ニュースを書く人、選ぶ人、あるいはニュースを伝える人はこうした問題の専門家ではありません。メディアに取り上げられた話題が、その通りの重要性をもっているかどうかは確かなことではないのです。大きな扱いでも、私たちにとってはそれほど重要でないこともありますし、一方で取り扱いが小さくても大事なニュースもあります。
社会人にとって必要な知識といえばたくさんあるかもしれませんが、食や医薬品についての知識は、それらが直接自分自身の身体に関わるという点でとりわけ重要なものです。一般に身体によいとされる成分であっても、たくさん摂りすぎれば悪影響が出てくることはよく知られています。また、たくさんの成分が含まれている健康食品は成分の種類が多いから安心というのは本当でしょうか?それらが自分に必要かどうかもよく考えておく必要があります。
「大学での勉強は役に立たない」とはしばしば大人の人たちが指摘することで、私自身もそれが何を指しているかは何となく理解できます。通常、大学で学んだ知識をくらしや仕事で使える形に変形するためには、みなさんがそれぞれ自分のやり方で工夫をしなければいけません。しかしながら、薬学に関しては例外的です。薬学の知識は、自分のものにしたその日から役に立ちます。大学で自覚的に学ぶことができれば、非常に使える知識を手にすることができるのです。ただし、「薬学」ですから、一口メモとは違います。それなりに、基礎から応用へと積み重ねるための地道な努力は必要です。
その食品を手に取るかどうか、あるいは服用している薬にはどんな影響があるのか、そんなことを自ら判断するための基本的な知識を大学で得ることは、将来必ず自分や身のまわりの人に役立つことでしょう。
2008.04.18田中智之
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