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消化管吸収されない抗生剤の使い道って何だろう?

病院内で主に医療従事者を媒体として、ある患者から別の患者に感染症が広がることを院内感染と言い、これまでに多くの犠牲者を生み出しています。その中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌によるものは、MRSA 感染症と呼ばれ、既存の多くの抗生剤が効き難いために、特に恐れられています。その MRSA 感染症の特効薬の一つに抗生剤であるバンコマイシンが挙げられます。

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バンコマイシンには、このお薬が消化管吸収されないという大きな特徴があります。従って、敗血症や感染性心内膜炎などの MRSA 感染症に対しては点滴静脈内注射にて患者さんに投与されます。しかもバンコマイシンを急速に静脈内注射しますとヒスタミンが遊離されることにより、首から上が赤くなるレッドネック症候群や血圧低下を引き起こしますので、バンコマイシンは一時間以上かけてゆっくりと点滴静脈内注射することが重要な注意事項となります。

先程述べましたように、バンコマイシンは内服しても消化管吸収されませんので、内服では使い道がないように思われがちです。ところがどっこい、バンコマイシンは内服にて、骨髄移植時の消化管内殺菌や感染性腸炎の治療に用いられているのです。すなわち、通常の内服薬は胃や上部消化管から吸収されてしまいますが、バンコマイシンは吸収されないためにロスなく患部に到達して殺菌作用を思う存分発揮するわけです。

2008.07.24中村一基

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