気道は、鼻腔・口腔・喉頭・気管・気管支・肺胞から成り立ち、我々が吸い込んだ空気の通り道です。気管支喘息とは、免疫グロブリンE抗体の関与するI型アレルギー疾患であり、従来は、咳や呼吸困難を誘発する気管支収縮症状をテオフィリンなどの気管支拡張薬にて改善する対症療法が主流を占めておりました。ところが近年、その病態は気道炎症に基づくものであるということが明らかにされ、抗炎症作用を有する吸入ステロイド薬が、病態の根本治療法として注目されるに至っております。
ステロイド薬とは、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドやその関連合成品を指しますが、これらを患者さんが内服しますと、骨粗しょう症や高血糖などの全身性の副作用が懸念されますので、患部のみに薬を作用させる目的で吸入製剤として使われております。とは申しましても、薬は口腔内を通過しますので、ステロイド薬の免疫抑制作用による口腔内カンジダ症などの副作用が発現する恐れがあり、吸入薬使用後には十分にうがいを励行して、薬を洗い流すことが重要です。
そこで開発されたのが、吸入ステロイド新薬シクレソニド(商品名オルベスコ)です。この新薬は、口腔内を通過後に気管支内で活性化型に変化する局所活性化型製剤であり、従来の吸入ステロイド薬よりも、副作用である口腔内カンジダ症や嗄声(しゃがれ声)が起こりにくいと期待されています。さらに、通常1日1回吸入するのみのお薬で、効き目が持続的でもあります。
2009.02.09中村一基
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